ノリントンが指揮するシューマン「交響曲第3番“ライン”」の響き
陽気なおっさん、ロジャー・ノリントン(Sir Roger Norrington, 1934- )がフィンランド放送交響楽団を指揮して演奏するシューマン「交響曲第3番“ライン”」のヴィデオを見て、この作品には「ピュア・トーン」が似合っているのかもしれないと思った。
- Schumann: Symphony No. 3 - Roger Norrington, FRSO - YouTube
(1/3) https://www.youtube.com/watch?v=n1uGAARnPn8
(2/3) https://www.youtube.com/watch?v=gVmh9-Z9jOY
(3/3) https://www.youtube.com/watch?v=WtG-9GNN-sE
― 第1,2楽章
― 第3,4楽章
― 第5楽章
弦楽器の音にヴィブラートがかからないので、管楽器の響きに弦楽合奏のリッチな響きが覆い被さることがない。弦と管がユニゾンで奏する際に両方の音を聴くことができるから、シューマンが意図した楽器の組みあわせがどのように変化していくかがよくわかる。そして、特に第5楽章に頻出するヴァイオリンのシンコペーション・リズムがヴィブラートで濁ることがなく、スコアに記された音の意味を明確に聴き取れるのもうれしい。ヴィブラートは音を延ばす過程における効果なのであって、音を発音した瞬間に発生するリズムを曖昧にすることがあるからな。また、原則としてポジションを低くとり開放弦の使用もいとわない弦の響きが、「ピュア」な雰囲気をさらに盛り上げている。裸のガット弦だったら、もう少し落ち着いた色合いになったかもしれないが、ノリントンのゆたっりとしたテンポの中でオーケストラはどのパートも丁寧に響きを合わせているので、全体としてしっとりとした響きを保ち、すっきりとしたフレーズ感を実現しているのが素晴らしい。フィンランド放送交響楽団さすがだな。
あと、チェロの第2プルトで弾いているおっちゃんの弓の持ち方がコントラバスみたいでなかなか良い味を出してる。こちらのサイトによるとJukka Rautasaloというチェリストで、バロック・チェロとヴィオラ・ダ・ガンバのスペシャリストなんだそうだ。なるほど。