バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 フライブルク・バロック・オーケストラのバッハ「ブランデンブルク協奏曲」(2014年2月15日、風のホール)

 一昨年に引き続き、三鷹市の風のホールでフライブルクバロック・オーケストラ(Freiburg Baroque Orchestra:FBO)のコンサート。曲目は、J.S.バッハブランデンブルク協奏曲」全6曲。

 コンサートが行われたのは記録的な大雪(2014年2月14日)の翌日で、チェンバロコントラバスヴィオローネという大型楽器の到着が間に合わなかったそうだ。会場に張り出されたアナウンスによると、チェンバロは風のホール備え付けのものに切り替え、コントラバスヴィオローネは都内で別の楽器を調達したらしい。リハーサル時間を延長して調整するということで開場が30分遅れ、開演は17時30分からとなった。「ブランデンブルク協奏曲」の演奏順は以下のとおり。1番から4番の間に6番と5番を挿入するような形。

  1. 第1番 ヘ長調 BWV1046
  2. 第6番 変ロ長調 BWV1051
  3. 第2番 へ長調 BWV1047
         - 休憩 -
  4. 第3番 ト長調 BWV1048
  5. 第5番 ニ長調 BWV1050
  6. 第4番 ト長調 BWV1049
        - アンコール -
  7. テレマン「協奏曲 ヘ長調」TWV54:F1 よりジー

 コントラバスが使われたのは1番から4番までの4曲。こちらの見(聴き)間違いでなければ、ヴィオローネは登場せず、6番はチェロ、5番は6番で登場したヴィオラ・ダ・ガンバが使われていた。ちなみに、5番と6番は1パート1人による演奏。
 どの曲も活き活きとしたFBOらしい演奏だったが、特にヴィオラ・ダ・ガンバが参加した5番に感銘を受けた。ソロ楽器として中央横向きに置かれたチェンバロを挟むように、左側にトラヴェルソとソロ・ヴァイオリン、右側にリピエーノ・ヴァイオリンとヴィオラ、それから通奏低音のチェロとガンバ。右側のグループはチェロとガンバが前列に座り、その後ろでヴィオラとヴァイオリン(ゴットフリート・ファン・デア・ゴルツ)が立ったまま演奏。この配置のおかげでバッハが5番の音楽に込めた対話の要素が、視覚的にもよくわかっておもしろかった。また、ヴィオローネのパートをガンバで演奏したことで響きが腰高になり、小さな音量による緻密で透明な音の世界が創り上げられた。冒頭のアレグロ楽章では、同音反復からくる戦闘的なイメージが排されていたのではなかったか。決して先を急がず、微妙に移ろいゆく和音が通奏低音とリピエーノの4つの弦楽器によって奏でられ、驚くばかりに透明な光が放たれていて息をのんだ。もし、この世に「絶対的な美」というものがあるなら、あの数小節の音楽体験は、まさにそれにふさわしいものだったと言える自信がある。
 本当に素晴らしいコンサートであったことは間違いない。しかし、もし大雪が降らず、楽器が予定通り到着してヴィオローネが使われていたらどうだったのだろう?同じような内容になったのだろうか。それとも少し違ったコンセプトによる演奏となったのだろうか。知りたいようでもあるし、知りたくないようでもあるが、この編成でブランデンブルクの5番を聴くことは、もう一生ないことだけは確かだろう。