バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 グリーグ「最後の春」

 ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグ(Edvard Hagerup Grieg, 1843-1907)に「最後の春 Våren (Last Spring)」という作品がある。「2つの悲しき旋律 Op.34」という弦楽合奏曲の第2曲だが原曲は歌曲だ。

 こちらのサイトには歌詞の対訳があり、それによると、ようやく到来した北欧の春が自分にとっては最後のものとなるかもしれない、と歌っていることがわかる。

私がこの春の息吹に見るのは長い間なくしていたもの
だが私は憂鬱に自分にこう問いかけるだろう「これで最後なのか?」
なるようになればいい、私はそれでも生命の息吹を感じるのだから
この春を味わいつくし そしてすべてが終わるのだ

 「春」という言葉から少し距離があるかのように聴こえる音楽の儚さ、今にも何かが壊れてしまいそうなもの悲しさは、そんなところから来ているのだろう。

 1920年、まだアコースティック録音の時代に、オーストリア出身のテナー歌手リヒャルト・タウバー(Richard Tauber, 1891-1948)が歌った演奏はドイツ語訳でまったく同一の内容ではないかもしれないが、春の訪れを格調高く、力強く歌い上げており、この作品の最良の歌唱のひとつだと思う。

 CDならNAXOSからの復刻盤が入手しやすいかもしれないけど、アコースティック録音特有のノイズを我慢できるなら、盤質は悪いが音のよいPearlの復刻盤“Richard Tauber and The Acoustic Lieder Recordings”がおすすめ。
 
 リヒャルト・タウバー 歌曲名唱集(1919-1926) Various: the Acoustic Lieder