バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ゲーベルとベルリン・フィルによるヨハン・クリスティアン・バッハ

 2013年10月に行われたラインハルト・ゲーベルのベルリン・フィル・デビュー演奏会からヨハン・クリスティアン・バッハ(Johann Christian Bach, 1735-1782)の歌劇「ゴールのアマディ」序曲がYouTubeで一部公開された。たった3分の抜粋ヴィデオだけれど、片側に3台ずつ、計6台のコントラバスを含む大オーケストラが、巨大なフィルハーモニーの舞台いっぱいに広がってバッハの息子の作品を演奏しているのを見ると、胸の空くような思いがする。でかい会場でやるなら、空間のスケールに合わせてオーケストラのサイズを大きくするのが本来のあり方。
 ゲーベルには、この序曲全曲を収めたCDがある。やはりモダン・オーケストラであるバイエルン室内フィルハーモニー管弦楽団との演奏だ。こちらはベルリン・フィルのようなフルサイズのオーケストラではなく、コンパクトなサイズの室内管弦楽団
ル・デュク:交響曲第3番/サン=ジョルジュ:ヴァイオリン協奏曲 Op. 2, No. 1/モーツァルト:交響曲第31番(リー/バイエルン・カンマーフィル/ゲーベル)
 聴き比べてみて気がついたのだが、バイエルン室内フィルではスタッカートで演奏されている音型が、ベルリン・フィルとの共演の際にはテヌートになっている。巨大オケとの共演時の方が、CDよりもアーティキュレーションの厳密化が図られているというのは大変興味深い。
 この序曲、本来はモーツァルト交響曲第32番のように「ABA’」の3部形式なのだが、YouTubeで観られるのは最初の「A」の部分だけだ。それでも、ヨハン・クリスティアンの作品が、いかに活き活きとして雄弁であるかはよくわかる。私たちには聴くべき作品が山のようにあって、それは「古楽愛好家向け」に閉じられてはいけないのだよ。シンフォニー・オーケストラのレパートリーに、バロックや前古典派と言われる人達の作品が再び戻ってくることを、心の底からから願わずにはいられない。