バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 クリストファー・ホグウッド追悼

 2014年9月24日、クリストファー・ホグウッドChristopher Hogwood, 1941-2014)が73歳で亡くなった。この7月に病気のためとして東京都交響楽団の11月定期をキャンセルしていたが、まさかこういうことになるとは。

 ホグウッドと言えば、なんと言ってもヤープ・シュレーダーとともにアカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック(The Academy of Ancient Music 略称:AAM)という古楽器オーケストラを指揮したモーツァルトの「シンフォニー」全集である。「ともに」というのは、当時の習慣に従ってシュレーダーコンマスの席でヴァイオリンを弾きながら、ホグウッドはチェンバロあるいはフリューゲルを弾きながら協働で、ということだ。「交響曲」ではなく「シンフォニー」という概念はとても新鮮なものとして受け入れられたが、音楽学者ニール・ザスロウ(Neal Zaslaw, 1938- )の強力なサポートを得て、地域とオーケストラの編成・サイズとの関係を軸に組み立てたそのレコードは、音楽学が「演奏」というものにどう貢献するのかということを極めて具体的に示すものでもあった。
 ホグウッドの公式サイトに掲載されている情報を見ると、このプロジェクトにおける最も早い録音年は1977年(第2巻)であり、一番最初にリリースされた第3巻の発売年は1979年となるようだ。ちなみに、18世紀オーケストラの最初の演奏会が1981年だから、ホグウッドたちは、先日亡くなったブリュッヘンに先駆けて古典派のシンフォニーを集中的に取り上げていたことになる。

 ホグウッドは、生前のインタビューで「巨匠風にも演奏できるが、意識してそういうことはしない」と言っていたように思う。彼の録音に聴かれる贅肉を削ぎ落としたような「潔癖さ」というのは、こういうところから来ているに違いない。私たちが心待ちにしているジェミニアーニの校訂譜の続編も、徹底した調査や資料批判を経て潔癖な内容になっていることだろう。そういえばAAMとの最初のレコーディングもジェミニアーニだったな。心からご冥福をお祈りしたい。