バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

スヴェトラーノフとNHK交響楽団が奏でるカリンニコフ「交響曲第1番 ト短調」

 NHK交響楽団を鳴らすことにかけて、エフゲニー・スヴェトラーノフ(Svetlanov Evgeny, 1928-2002)以上に長けた指揮者はいなかった。中でも彼がN響を指揮したヴァシリー・カリンニコフ(Vasily Sergeyevich Kalinnikov, 1866-1901)の「交響曲第1番 ト短調」は、希有の演奏として語り継がれるだけの価値がある。

 スヴェトラーノフが指揮すると、大音量になっても音が割れず、小さな音も透明感に溢れ、普通ならどっちつかずになりがちな中音量時の音の輪郭がはっきりしているのに驚かされる。オーケストラはどの音も、どのフレーズも、力むことなく、また先を急ぐこともなく、あるべきところにあるべき響きを鳴らしている。なによりも、響きの中に作品の姿が立ち現れてくるのがすごい。
 演奏が終わると同時にブラボーが飛んでいるが、舞台を立ち去る前にオーケストラに向かって交響曲のスコアを高く掲げている姿を見ると、指揮者にとっても会心の演奏であったのではないか。このコンサートは何を犠牲にしても行くべきだったなと、20年を過ぎた今でも後悔している。